拡大内視鏡では病変部を洗浄し粘液などを取り除いたあとで、ピオクタニンまたはクレシールバイオレットなどで染色し、拡大内視鏡にて病変表面の腺管ピットを観察することによって病理組織学的構造を推定することができます。
この分野のパイオニアである昭和大学横浜北部病院の工藤教授の分類が有名です。
ピットパターンは、その形状からⅠ型からⅤ型までに分類されて、それぞれ相当する可能性が高い病変が明らかにされています
▼ピットパターン分類(工藤・鶴田分類の改変) | ▼組織像 | |
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Ⅰ型 | 正常粘膜のピットパターンです。 | 正常・炎症・過形成 |
Ⅱ型 | 過形成性粘膜のパターン | 過形成 |
Ⅲ型 | Ⅲs型は腺管腺腫または粘膜内癌 | 腺腫・癌 |
Lは腺管腺腫または腺管絨毛腺腫のパターン | 腺腫・癌 | |
Ⅳ型 | 絨毛腺管腺腫のパターン | 腺腫・癌 |
Ⅴ型 | 腺癌のピットパターン | |
Ⅴi型 粘膜内癌層が保たれている場合 | 癌 | |
Ⅴn型 浸潤癌のパターン | 癌(sm癌) |
拡大内視鏡所見でⅤ型ピットを示し、特にⅤn型が面を形成している場合は高度な線維芽細胞増生(desmoplastic reaction DR)を伴っている場合が多く(藤井ら)、sm以深の深達度が確定的となります。
一方、通常内視鏡にてsm癌様の無構造と見えた所見が、拡大内視鏡像でⅢsまたはⅤi型ピット主体を示し、実際の深達度はm癌である場合などにピット観察によりsm癌との鑑別が可能になります。
逆に、sm深部浸潤病変の表層に粘膜内癌が残っていた場合、病変の表面拡大所見だけではm癌と診断され、正確な深達度診断ができない場合があります。
特に、病変に厚みと高さがある隆起型早期癌で、通常内視鏡や拡大内視鏡でも表面構造から深達度診断が困難な場合は、注腸X-Pまたは超音波内視鏡などの他の検査を併用しそれらの検査所見を参考に深達度診断を行う必要があります。
このような例外的に診断が困難な症例では、ひとつの検査所見にこだわらず、通常内視鏡・拡大内視鏡・注腸X-P・超音波内視鏡(EUS)など多くのの情報を組み合わせて総合的に診断することが正確な診断への近道です。